病院で「作業」療法ができないは本当か?-作業療法士のアイデンティティ-
講義をしていると、「うちの病院では作業療法ができないんです」という相談を受けることがあります。大学教育と臨床現場のギャップに悩む若い方は本当に多く、残念ながら作業療法士としての職を辞した方を何人も見てきました。
大学や専門学校で勉強をし、国家試験を経てようやく作業療法士になれる訳ですが、残念ながら就職して教育と臨床のギャップに悩む方は少なくありません。これは特定の病院や施設の話ではなく、全国的にそうではないかと感じています。今日はそう言った悩みを少しでも解決できることを祈って、この記事を書きます。
ー理想と現実とのギャップー
この記事を読んでいる人の中には専門職ではない方もいらっしゃるため、簡単に作業療法士について説明しておきます。作業療法士は、リハビリテーション職の1つで、病気や怪我などによって障がいを負った人などに対して「上手く生活が送れるように支援する」仕事です。
参考記事:〇〇療法士って何が違うの?
参考記事:生活行為ってなに? ー 医療と介護の現場を近づけるマネージメントー
上手く生活が送れるようにする方法として、筋肉やバランス能力を鍛えなおしたりする方法(回復モデル)、上手くできるようになりたいことを繰り返し練習する方法(習得モデル)、便利な道具などを利用して上手くできるようにする方法(代償モデル)、家族や一般の方に向けた講習会を行って介助者に幅広い知識を持ってもらい、上手く支援してもらう方法(教育モデル)があります。
これらの方法を用いて、僕たちは仕事をするのですが、どういう訳か、病院や施設によってはこの方法論に偏りが出たり、方法論を用いることすら否定されることがあります。作業療法士にも色々な考え方を持つ人がいるため、一概にどれが良くてどれが悪いというものはありませんし、患者さんによっても使い分けが大切になってくると思うのですが、上司が部下に考え方を押し付けるというのはあまり良くないのではないかなと感じます。
ですので、今日は僕の作業療法観については書きません。どうやったら病院で作業療法ができるようになるかについての方法論を書きます。
ー方法論を吟味するためにクライエントの話を聴くー
まず、作業療法で重要となってくることは、クライエントの話を聴くということです。クライエントが何をできるようになりたいと思っていて、作業療法士に何を求めているかということを明らかにする必要があると思います。
一般の方は、作業療法士が何をする仕事何かを知りません。熱意を持っていることは良いことですが、いきなり、自分の作業療法観をクライエントに押し付けても大概上手くいきません。何に困っていて、どういう風に介入することが望ましいかをクライエントと一緒に協議し、決めていきます。そうすることでクライエントとの信頼関係が築けるため、自分の作業療法士としての仕事が行いやすくなります。
回復モデルがいいのか、最初から習得モデルで行けそうなのか、自助具の提案を受け入れてくれそうかなど、色々と考慮する点はありそうです。
ー上司のための勉強ではなく、クライエントのために勉強するー
勉強は何のためにするのか?答えは簡単です。クライエントのために勉強をするのです。決して、上司が求めることに答える/応えるために勉強するのではありません。極端なことを言うと、上司に怒られても構いません。クライエントが褒めてくれて、喜んでくれればいいのです。クライエントが上手く生活できるために勉強するのですから、誰にも不利益は与えていません。
勉強の目的を間違えると、自分の作業療法士としての理想像から、実践がどんどん離れていきます。目の前のクライエントのために勉強しましょう。クライエントが何に対して困っていて、どういう方法なら解決できるかを考える。とってもシンプルです。こんなことを言ったら怒られそうですが、病院内で行っている勉強会がクライエントのためにならないものであれば、2時間早く家に帰って英語論文でも読んでいた方が良いと思います。その方が最新で最適の知見を得ることができます。
ー自分ひとりで頑張らない、仲間を作るー
色々と書きましたが、ひとりで頑張っていると、つまずくことが多くあります。悩みが深くなって抜け出せなくなることさえあります。そういう時のために仲間を作りましょう。一緒に勉強したり、悩みを相談したり、お酒を飲みに行ったり、旅行ができる仲間を作りましょう。3人寄ればなんちゃら~という諺もあるくらいです。
また、職場に同じ想いを共有できる仲間がいない場合は、外部の勉強会に参加するのも一つの手です。現在はSNSを用いた交流も盛んになっているため、以前に比べて色んな人とコミュニケーションを取りやすくなっているのも良いですね。僕たちの時代はmixiでした…(年齢がばれる 笑)
ー学会発表をする、論文を書くー
少しずつ実践ができるようになってきたら、自分の経験を学会発表してみましょう。僕は2年目の時に初めて学会発表しました。そして、4年目の時に1本論文を掲載しています(書いていたのは3年目の時)。まだ新卒だからできないということはありません。新卒だからこそ、やるのです。
学会発表や論文執筆で自分の考えがどんどん深まりますし、仲間が増えます。論文を読みましたと言われると、苦労して書いてよかったなぁと思え、また次も頑張れます。臨床をやりながら、年に1本程度何か執筆をするというのは大変ですが、やろうと思えば案外やれるものです。事例報告でも良いですしね。
ーとりあえず、やってみるー
もうここまで来たら、後はやるだけです。実践しないとできるようになりません。気合が大事!なんて言うと、根性論の体育会系と思われそうですが、割と気合大事です(笑)
そして、直接話を聞きたいなぁと思ったら、6月は熊本の生活塾、7月は岩手陸前高田でのエリア勉強会、東京のOTIPMシンポジウム、9月は大阪のAMPS講習会で講師を務めるので、どれかに来て下さい(宣伝)
まだ未告知の講習会もあるので、随時お知らせしますね。
もし、具体的な相談事があれば、個別にFacebookか最近始めたTwitterに個別メッセを下さい。学会発表のお手伝いも時々してますよ(もちろん無料)
作業療法はめっちゃおもろいので、一緒に勉強していきましょうね。では。
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