作業療法士が就労支援のために行うべき6つのこと

2017年06月19日

 前回は、就労支援の大まかな流れや就労継続支援と移行支援の違いを説明しました。今日は具体的にどのように支援をすれば良いのかを考えていきたいと思います。

 就労支援には様々な職種が関わる必要がありますよね。それでは、作業療法士/理学療法士/言語聴覚士などのリハ専門職がどのように就労支援に関わることができるかについて、6つの視点から解説したいと思います。


1.休職期間と傷病手当の確認

 まず最初に行わなければいけないことは、休職期間と傷病手当の確認です。休職期間に関しては、会社の就労規則に定められていることが多いと思います。この休職期間を過ぎてしまうと、残念ながら「退職」という扱いになります。どの時期までにどういう形で復帰するかということをチームで検討する一つの材料になりますので、必ず確認する必要がある事項です。

 そして、次に確認しておきたい情報は、傷病手当の有無です。傷病手当は民間の保険ではなく、いわゆる健康保険の加入の有無によって確認できます。ここでの健康保険は、国民健康保険ではなく、会社に勤めている人が入っている社会保険のことです。傷病手当は自身で申請する必要がありますが、社会保険加入者であれば、会社を休むことになってから1年半は手当を受給することができます。経済的な援助が受けられれば、復帰に向けて万全の準備をすることができますね。

 ちなみに、受給を受けることができるのは、申請をしてから1年半ではなく、会社を休むことになってから1年半の期間となるので、申請は早めに行う必要があります。場合によっては、大企業などは組合の保険に入っていることがあるので、手当を受給できる期間が長くなる方もいらっしゃいます。残念ながら、自営業などで国民健康保険に加入している方は対象となりませんので、ご注意下さい。


2.仕事内容の確認と遂行分析

 これは作業療法士の得意分野ですね。どのような仕事内容かを確認し、どんな工程があって、どんな道具を使って、どのように遂行するかを評価します。職種によっては、病院で完全に再現できないこともあると思いますので、可能な限り職場訪問を行って下さい。実際に仕事を行って頂き、それを評価することが大切です。

 遂行分析をし、どのようなことを行う必要があるかが分かれば、必要な技能を高める練習や代替手段の提案などを行うことができます。遂行分析をせずに、筋力やバランスなどの下位要素の評価ばかりするとアプローチが復職には関係のないものに偏りやすくなるので、遂行分析は必ず行って下さいね。

参考記事:トップダウンアプローチの重要性 -遂行分析を必ず-


3.問題点の改善と強みの強化

 遂行分析を行ったら、そこで明らかとなった問題点の改善や強みの強化を図ります。

 例えば、事務員の方の復職では、計算やパソコン操作が必要となってきます。暗算が難しければ、計算機を使って計算する。計算機の使用が難しければ、パソコンで自動計算にしておくなど、実際に仕事が効率よく行える方法を一緒に考えていくことが大切です。

 何ができて、どういう環境であれば、どの程度の課題難易度を行えるかということをしっかりとクライエントと確認する必要がありますね。

 他にも、料理人の方の場合は、野菜を包丁で切るのか、スライサーを用いるのか、あるいは、職場と交渉して包丁は使わず、炒めたり盛り付けたりする工程に絞って貰うことができるのかなど仕事に結びつくことができる方法を考えなければなりません。

 作業遂行の質の改善は、身体的な努力と効率性から判断できますので、10kg程度の重いものを持ち運べるようになったとか、情報処理検定の課題が20分から15分に短縮したとか、具体的な記述をしましょう。会社の方は医療の専門家ではないので、筋力(MMT)や高次脳機能障害について語られても理解できません。そのため、何がどれくらい、どの程度できるのかを分かりやすく伝えなければなりません。そのためにも、介入はしっかりと仕事内容を確認/分析した上で行う必要があります。何ができて、何が難しいかをしっかりと把握し、職業技能/能力を伸ばしていくことが大切です。


4.他職種/他機関との連携

 就労支援では、多くの職種が関わる必要があります。職場訪問に積極的に行くことができないという療法士も多いのではないでしょうか。そのためにも、必ず外部の機関と連携を図る必要があります。

 リワークの場合は、職業センターや就労移行支援事業所と一緒に介入することが多くあります。両施設ともジョブコーチやソーシャルワーカーなどが在籍していて、クライエントの支援をしてくれます。職業センターは、職場に復帰する際に、定期訪問してくれ、クライエントと職場の両方に問題点や改善点をヒアリング/アプローチしてくれます。職業センターによっては、職能評価をしてくれたり、通所型のアプローチを行ってくれる場合もあります(センターの規模によります)

 就労移行支援事業所では、まず事業所に通って仕事に必要な技能を身につける練習をします。その後、後述するリハビリ出勤(実習)などに同行してくれたり、復職後も定期的に訪問を行ってくれます。

 普段、病院から出ることができない療法士に代わって、職場での様子を評価/報告/介入して下さるので、役割分担しながら一緒に復職に関わっていけると良いですね。


5.職場との連携(情報交換と交渉)

 職場との連携は、言葉で言うと簡単そうですが、本当に難しいものです。まず、病気や具体的な症状を伏せるのか(クローズ)、全て開示するのか(オープン)をクライエントや他職種と協議することから始めます。会社によっては、「完治しないと復職させない」ということもありますので、慎重に連携を図っていくことが必要です。

 また、復職というのは今後の経済面/人生に大きく関わってきますので、療法士が1人で動きすぎると良くない場合があります。クライエントが望まない情報を開示したり、会社との交渉を図ることで復職が困難になることさえあります。必ずクライエントと常に話し合いながら、職場にどういう情報をどの程度伝えて良いかを協議してください。この情報開示の程度は流動的ですので、頻繁に確認することが必要です。

 そして、クライエントと一緒に、どの程度のことができて、どのような状態なら復職ができるのかを会社と協議します。現在できることと、できないこと、今後考えられる問題点などを話し合います。ここで、リハ出勤が可能かということや週に何回/何時間程度の出勤から始めたいという希望も伝えていきます。最終的には、配属先、賃金、雇用形態の確認を行っていきます。


6.リハビリ出勤、復職

 最後の段階は、リハビリ出勤と実際の復職です。リハビリ出勤とは、復職の一歩手前の状態で、会社に実習に行くことです。リハビリ出勤中は復職している状態ではないので、傷病手当を受給している状態です。一方で、復職していないので、何かあっても労災が適応されません。そのため、会社によっては、仕事内容のリスクを考え、リハ出勤は行えず、そのまま復職となるケースもあります。

 リハ出勤、復職の段階では、実際に職場での評価を行い、上司や同僚にも問題点や普段の状況をヒアリングします。他職種との連携の項目でも挙げましたが、この部分は病院の状況に合わせてジョブコーチなどに依頼しても良いと思います。

 継続したフォローアップが大切で、最初のうちは1ヶ月~3ヶ月に1度程度の定期的な職場訪問が必要です。リハ出勤が行える場合は、産業医や保健師などと復職時期について協議することもできます。担当医から、「復職後1年は残業しないように」などと意見書を貰っておけば、働き方を考慮してくれる場合もあります。


 少し長くなってしまいましたが、以上が療法士が就労支援を行うポイントです。保険などの制度についても学ばないといけないことがたくさんあります。職場に手すりをつけるなど、環境調整に対する補助金などもありますので、必要な場合はハローワークにお問い合わせ下さいね。

 また、リワークと新規に仕事を見つけることは少し介入のポイントが異なってきますので、また機会があればご紹介したいと思います。

 最後に、前回の記事をFacebookやTwitterで拡散して下さった方に感謝致します。予想を大きく超える、多くの方に就労支援についてお伝えすることができました。本当にありがとうございました。更に、この記事を読んで、就労支援をしたいと思ってくれる療法士が1人でもいたら嬉しいです。

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