重度障がいの方へのリハビリは必要か
結論から言いますと、私個人としては、重度障がいのある方へのリハビリは【必要】だと思っています。一方で、残念なことに医療/介護従事者の中には、重度障がいのある方へのリハビリは必要ないと思っている人もいます。
脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患、交通事故などによる脳損傷、心肺機能の低下による低酸素脳症、ALSや認知症などを始めとする進行性の難病、脳性麻痺など、起因となる疾患は様々です。今回は、重度障がいのある方へのリハビリの必要性と、どのようにリハビリを行ったら良いかについて記事を書きたいと思います。
重度障がいのある方は、ご自身で体を動かすことが難しかったり、意思を表出することが難しい場合が多くあります。少しずつ体が動かせなくなっていく場合(進行性疾患)と、ある日突然体が動かせなくなる場合(脳卒中や事故など)があります。
重度の障がいがあると、回復の見込みが少ないとして、充分なリハビリを受けることができなかったり、回数を減らされることがあります。
実際に私が経験した例では、
- (相談員から)退院時に訪問リハビリができることを知らされなかった
- (ケアマネから)介護保険でケアプランにリハビリを入れてもらえなかった
- (療法士から)希望した内容のリハビリを行ってもらえなかった
- (看護師から)今の状態でリハビリが必要なのかと言われた
- (医師から)公費でリハビリをいつまで続けるのかと言われた
と、【私たちは見放されたのだという悲痛な思いを抱えている方】と多く出会いました。
しかし、重度障がいのある方にもリハビリは必要ですし、有効であると私は考えています。
ここからは、私がリハビリが必要であるという理由を書こうと思います。生活を楽しくする【生活の中でのリハビリ】と、体の機能を保つ【体のリハビリ】に分けて書きます。
生活の中でのリハビリ
まず、生活の中で行えるリハビリについて書きたいと思います。生活の中で行えるリハビリの大切な点は、好きなことを楽しむという点です。
- 好きな音楽やラジオを聴いてもらう
- 好きな本、新聞などを読み聞かせる
- 好きなテレビを見る
- 好きな物を食べる
- おしゃれな服を着る
- 化粧をしてみる
- お風呂の時間を楽しめるように工夫する
- 車いすに乗って散歩をする
- 一緒に買い物などに出かける
体を動かすことが難しく、意思表示のできない遷延性意識障がいの方も、好きなことを行うと普段と違う反応が認められることが多くあります。意思表示はできないけれど、ご自身の意識や好き嫌いの感情はあるのです。
明確な意思表示ができないだけなので、反応を見ながらご本人様の好きなことを一緒に楽しんで下さい。必ず良い反応があるはずです。
寝たきりの状態から意思表示ができるまでに回復した方の中には、「今までのことは全部わかっていた」とおっしゃる方も多くいらっしゃいます。
体のリハビリ
体のリハビリは、体の機能を維持するためのリハビリです。なぜ体のリハビリが必要なのかという理由も記載させて頂きます。
- 関節可動域の維持、筋肉のストレッチ(関節が固くならないように予防します。関節が固くなると着替えやおむつ交換の際にご本人様も介助者も大変になります。)
- 手足を動かす練習(体を動かせる場合は、筋力維持を行うために筋力トレーニングを行います。)
- 起居動作練習(寝返りや起き上がりの練習を行います。介助者の負担軽減にも繋がります)
- 座位、立位練習(心肺機能の向上、骨にストレスをかけることで骨粗鬆症の予防、尿路結石の予防などに繋がります)
- 呼吸リハビリ(胸郭の可動域の拡大、排痰肢位の指導、腹臥位による呼吸機能の改善など)
- 口腔、嚥下リハビリ(飲み込みを改善したり、口腔内を清潔に保つことで誤嚥性肺炎を予防します)
ここまで様々な私見を述べてきましたが、私は多くの重度障がいのある方の生活や身体機能の改善をお手伝いさせて頂きました。
リハビリに関する考え方は、職種や個人それぞれですが、リハビリを希望する方やご家族を否定することは間違っていると思います。
医療/介護職は、患者さんやご利用者様が望むサービスを【選択できるようにする】ということが大切なのではないでしょうか。
自分の価値観を押し付けて、必要なサービスを受けることができない人を増やさないよう、多様性を認める世界になることを願っています。
ちなみに、弊社の訪問リハビリは自費ですので、公費ではありません。好きな時に、好きな時間、好きな回数ご利用になれますので、是非お問合せ下さい。