脳卒中後遺症のリハビリ成果と方法について
脳卒中とは、脳の血管が詰まる脳梗塞や脳の血管が破れて出血する脳出血などの総称です。脳が損傷すると運動機能や高次脳機能の低下が認められることが多く、脳卒中の後遺症として残ることがあります。リハビリと聞くと、手を動かしたり、筋力トレーニングをしたり、歩く練習をするといった運動に着目しがちですが、実は【本当のリハビリ】は【運動の向こう側】にあるのです。本日は、リハビリの成果と方法についてQ&Aの形を交えながら紹介させて頂きたいと思います。
一般的にイメージしやすいリハビリと言えば、先にも述べた運動であると思います。麻痺のある手や足を動かすことも大切なリハビリの【一環】ではありますが、【リハビリの成果】だと言うには少し足りないかもしれません。
ー発症後から半年経つと治らないって本当ですかー
治る、治らないという話になると、どうしても身体機能や高次脳機能障がいなどの一次障がいの話になりやすい傾向にあります。
入院期間が発症から最長6か月であると定められているのも一次障がいの改善のしやすさを勘案していると思われますが、必ずしもそれ以降は改善しないという意味ではありません。
繰り返し麻痺のある手足を生活の中で動かすことや認知機能をフルに活用する必要がある掃除や料理などの家事を行うことによって、脳の神経細胞が新たな回路を作り、麻痺や高次脳機能障がいの改善が認められることが多々あります。
一方で、脳損傷の程度によっては、意識が戻りづらかったり、麻痺の改善が思うようには行かない場合もあります。これは脳損傷の程度による個人差があると言えます。
ー発症から半年経って良くなった人はいますかー
私がリハビリを担当した方の多くは、病院を退院した後の方なので、ほとんどの方が発症から半年を経過した方です。
何をリハビリの成果とするかによって、良くなったと言えるかは変わってきますが、私がリハビリを行った方々の変化をご紹介したいと思います。
- 退院時は家の中を歩くのも大変だったけど、発症6年後の今は一人で2~3kmの散歩ができるようになった
- 脳出血後5年で自動車が運転できるようになった
- 買い物や旅行など、外出ができるようになった
- 褥瘡(床ずれ)ができなくなり、車いすで散歩に出られるようになった
- コンサートに参加できるようになった
- ゴルフが再開できた
- 1人でお風呂にはいれるようになった
- モップ掛けなど家の掃除ができるようになった
- みそ汁など簡単な料理ができるようになった
- 友達と外食できるようになった
- 趣味の物づくりを再開できた
など、多くの生活の変化が認められています。
ーリハビリの成果って何ですかー
続いては、リハビリの成果について個人的な見解ではありますが、述べさせて頂きたいと思います。
この記事を読み進めて頂いた方にはもうお分かりかとは思いますが、リハビリの成果は【やりたいことができるようになること】です。
手や足が動くようになること、認知機能が改善して見落としが減ったり、集中して何かに取り組むことができるなどの運動機能や高次脳機能の改善が成果なのではなく、その先の【何ができるようになったのか?】ということが大切なのです。
もちろん、リハビリを行う中で運動機能や認知機能の改善を促すことも重要ですし、私もそのようにリハビリを進めることもあります。
ただし、運動機能や認知機能の改善のみに焦点を当ててしまうと、リハビリの成果は上がらず、生活の質の向上には繋がりません。
ーどのようなリハビリが良いですかー
皆さんの状況がお一人お一人異なりますので、同一の手技や手法はお伝えできませんが、【生活の中で目標を持ち、それを実現するように取り組む】ことが重要であると考えています。
生活目標を実現するために何をすべきかを療法士に相談し、一緒に考え、取り組むことが大切です。自分にとって必要不可欠な作業は何かを考える時間も必要です。
具体的なリハビリ内容に関しては、次回の記事で事例を踏まえながら書かせて頂きたいと思います。
次回の記事も是非、楽しみにお待ちください。