生きがいは必要
前回は、「健康について考える」という記事を書きました。その中で出てきた一つのキーワード、それが「生きがい」でしたね。今日は生きがいの必要性について少しだけお話をさせて頂きたいと思います。

まず、生きがいは必要かどうかということについて。結論から言うと、皆さんのご想像の通り「必要」です。では、なぜ必要なのか?
以前、仕事を退職した後に生活習慣の乱れや気分の落ち込みなどを認める人がいるという論文を読んだことがあります。そういう方は、退職を楽しみにしていたけれど、実際に退職してみたら「毎日することがない」という方が多いそうです。
Jonsson H, Josephsson S, Kielhofner G: Evolving narratives in the course of retirement. Am J Occup Ther 54: 463-476. 2000.
Jonsson H, Josephsson S, Kielhofner G: Narratives and experience in an occupational transition: A longitudinal study of the retirement process. Am J Occup Ther 55: 424-432. 2001.
Jonsson H: Occupational transitions. InChristiansen C, Townsend E (ed), Introduction to Occupation: The Art and Science of Living 2nd ed. Pearson Education, Upper Saddle River. 211-230. 2009.
この解決方法は、自分が楽しく取り組めることを見つけるということです。これが簡単なようで本当に難しい…
もし、あなたが在職中であれば、退職前に趣味を見つけておくことが予防方法だと言えます。もちろん、趣味ではなく新たな仕事を見つけるということでもO.K.です。自分にとって「楽しみ」「やりがい」「役割」「自分らしさ」などを感じられることを見つけましょう。
論文では、徐々に出勤日数を減らしていくことが気分の落ち込みを防いだり、時間をかけて新たな作業を見つけることにつながると書かれています。
また、大規模な研究でも生きがいの必要性を伺い知ることができます。ただ単に何か運動やレクレーションを行うよりも、自分にとって有意義なこと(作業)を行う方が高齢者の「生活満足度」が高まるという結果が得られたのです。
*ただし、この研究には作業療法士の介入が入っています
Clark F, Azen SP, Zemke R, et al: Occupational therapy
for independent-living older adults. A randomized
controlled trial. JAMA, 278, 1321-1326, 1997
一口に「健康」と言っても、様々な要因が複雑に絡まっていますね。健康を保つためには、身体的な側面だけではなく、心や社会的な側面まで考慮する必要がありそうです。
少し自分の生活を振り返って、自分にとっての生きがいを感じることができる作業ってなんだろう?と考えて頂く機会となれば幸いです。