ワークライフバランスと作業バランスを見直そう
テレビや新聞で働き方改革という言葉を目にすることが増えてきました。IT業界では、申請すれば自宅で仕事をしても良いという時代になってきています。このような自由度の高い働き方は全ての職種に当てはまることではありませんが、仕事と生活のバランスや作業バランスを見直すことで、生活の質を高めることはできそうです。
ーワークライフバランスと作業バランスー
ワークライフバランスとは、仕事と生活の割合が適切かどうかということを見直す時に出てくる言葉ですね。仕事ばかりしていて、帰って寝るだけ…という生活では、心身ともに疲弊してしまいますよね。
一方で、作業バランスとは、普段の生活の中で行っている作業にはどんなものがあり、どんな意味があるのか、生活全般を見直す時に用いられる用語です。作業療法の評価には、作業療法士が開発した作業バランス評価用紙があります。
評価用紙がなくても、自分が朝から寝るまでに行っていることを書き出し、自分がしたいこと(願望)なのか、義務なのか、それとも両方なのかを見ていくと全体的な傾向が見えてくると思います。
ーすることと、しないことを決めるー
まず、自分の毎日の生活を振り返って、仕事ばかりで自分の趣味や楽しいと感じる時間が持てない、家族との時間が持てない、などの場合には、仕事量の調整を行うことが重要です。一日の時間は24時間で変えることはできません。
それでは、何を変えるか?
そう、自分の作業や行動を変えるしかありません。
私の場合、以前は自宅で講義資料を作ったり、論文や書籍の執筆をしていましたが、現在は自宅で仕事をすることは全くありません。訪問の空き時間を利用して、資料作りや執筆をしています。(これは病院勤めではできない働き方ではありますが…)
スマホで簡易的なメールのやり取り程度は行いますが、パソコンを開いて自宅で仕事をすることはありません。
その代わり、早く帰って子どもの風呂入れをしたり、一緒に遊んだりする時間を持つようにしています。ワークライフバランスを自分で見直し、作業の数や作業を行う時間(長さ)を調整しています。
することと、しないことを決めて、ワークライフバランスや作業バランスを自身でマネジメントすることが必要となります。
もちろん、仕事がとても楽しく、やり甲斐がある、という人は仕事量を減らす必要はありません。何に価値を感じるかは人によって違いますので、多様性があって良いのです。
ー作業的公正という視点ー
作業的公正とは、自分が行いたい作業を行える状態のことを言います。この作業的公正について久しぶりに考えさせられたことがありました。
Aさんは、上肢の痙縮を抑えるためにボツリヌス療法(ボトックス注射)を受けることを決めました。ボツリヌス療法を行った後には、入院での集中的なリハビリテーションが必要であると言われています。
しかし、Aさんは入院しないことを選択し、通常通りの生活を送りながら、自費リハビリの回数を増やして対応することを決めました。これは、一般的ではない選択と決定のように思えますが、作業的公正という視点から見ると「そうか」と納得させられるものでした。
入院をすると仕事に行けず、家族や友人との外食や晩酌もできない生活を送ることになります。実は、自分の行いたい作業を行えるように自身でマネジメントされていたのです。
Aさんは、私に自分の生活を自分でマネジメントすることの本質を教えてくれたように思います。
ー生活を振り返る機会を持とうー
忙しいばかりで、慌しく日々を過ごしている時にこそ、生活を振り返る機会を持つことが大切です。一呼吸おいて、自分のことを自分のために考える、そんな時間を持ってみてはいかがでしょう。そうすれば、家族や友人と過ごす時間の大切さに改めて気付かされることがあるかもしれませんね。