リハビリの卒業という概念は受け入れられるか-リハビリ難民は制度だけの問題?-

2017年06月12日

 2006年に医療保険の改定が為されて10年が経過しました。この時、ずっと受けることができていたリハビリに、疾患別の算定日数上限が定められ、大きな衝撃が走りましたよね。そして、同時にリハビリ難民という言葉が生まれました。

 2006年の医療保険改定は当時、本当に大きな影響をもたらしまた。リハビリ難民という言葉が大きく新聞やテレビ等のニュースで取り上げられ、リハビリを受けたくて受けることができない方の悲痛な叫びを良く目にしたものです。


ーリハビリ難民は制度改定から生まれたー

 医療保険の改定に伴い、リハビリができる日数に上限が設けられました。継続して行おうと思えば、条件付で行うことは可能なのですが、多くの医療機関の場合、長期間のリハビリ(入院/外来共に)自体をあまり行っていないことが多いです。

 理由としては、制度の問題が挙げられます。算定上限が決められている上に、入院の場合は在宅復帰率というものを求められるからです。病院では、ある一定期間の間に、どれくらいの患者さんが自宅に帰っているのかという割合を算出しなければなりません。

 また、前回の医療保険の改定時にはこれがより厳しくなり、身の回りのことがどれくらい1人でできるようになったかということも国に報告しなければならなくなりました。

 在宅復帰率や自立度が基準より下回ると、病院が貰える報酬(お金)を減額されることになります。そうなると、病院が在宅復帰率や自立度を上げやすい患者さんのみ受け入れるという新たな問題も浮上してきます。


ーリハビリ難民は制度だけの問題かー

 では、一方で理学療法士や作業療法士が行うリハビリの質は影響していないのでしょうか。病院に勤めていた際に「この人ではなくて、あの人に担当して貰っていればもっと良くなったかもしれないのに…」という言葉や「患者はリハビリの先生を選べない」と言った言葉を耳にすることがありました。

 確かに、患者さんは新卒よりもベテランに担当してもらう方が安心感はあるかもしれません。しかし、経験を積んだベテランよりも、一生懸命患者さんに向き合い、一緒にリハビリに取り組む新卒セラピストの方が良い結果を出すこともあります。

 では、一体なぜこのような現象が起こるのでしょうか。冒頭にも書きましたが、2006年まではリハビリは「エンドレス」に行うことができました。そう言う時代を過ごしてきた一部のベテランの中にはリハビリの卒業と言う概念がもしかしたら備わっていないのかもしれません。


ーリハビリの卒業ー

 ここで言うリハビリの卒業とは、ただ単にリハビリをしないということではなく、理学療法士や作業療法士が関わる必要がない状態で、尚且つ、安全に生活をすることができる状態とします。

 もちろん僕は、リハビリが必要な人には必要な分だけサービス提供ができれば良いと思っていますが、必要以上の過剰提供は不適切な対応だとも思っています。

 リハビリの本当の目標は、僕たちの関わりがない状態でも自分らしい生活を安全に満足して過ごしてもらうことです。僕たちの仕事は、それを促すことであって、生活の一部になることではありません。そういう意味では、リハビリの卒業ということを意識した関わりが当然必要となってきます。

 ただし、疾患や症状によっては、一生のお付き合いになる方もいらっしゃいます。国も特別に対応が必要な方には、特定疾患という形でリハビリを継続して受けることができる制度を作ってくれています。

 また、現状では、特定疾患に当たらず、医療機関などがリハビリを受けてくれないと言う方は、自費リハビリと言われるものを利用するしかありません。

記事:自費リハビリの可能性


ーリハビリの卒業に向けた取り組みー

 リハビリの卒業は、医療職が一方的に決めるものではありません。患者さんと一緒に考え、取り組み、決めていくものです。自宅では日中何をして過ごすのか、なぜそれをするのか、誰と過ごすのか、などを具体的に考えましょう。

 どういった方法で、どのように生活が送ることができれば、リハビリの卒業なのかを入院中から患者さんと一緒に考え、共有することが大切です。これができないと、退院後に「リハビリ難民」となります。「リハビリ難民になってしまった」という意識は、患者さんのリハビリという概念の捉え方に関係するのです。 一緒に目標を立て、共有し、解決していくプロセスが療法士に求められます。

 新しいことを学ばず、一昔前の医療制度や概念を引きずっている療法士の対応がリハビリ難民を増やす手助けをすることになるかもしれません。経験があること=新しい知識を持って適宜適応していくことは異なりますからね。

 経験や地位に胡坐をかくのではなく、しっかりと勉強して患者さんと向き合っていく必要がありますね。自戒を込めて…

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