できることを増やすー遷延性意識障害のリハビリ

2022年10月29日

 皆さんは遷延性意識障害という言葉を聞いたことがあるでしょうか。詳しい定義は後述しますが、一般的には植物状態や寝たきりと呼ばれています。本日は、遷延性意識障害のある方のできることを増やす取り組み、リハビリをご紹介させて頂きたいと思います。

 まず、遷延性意識障害の定義をご紹介します。以下の状態が治療後3ヶ月以上続いた場合に遷延性意識障害とみなされます。

  • 自力移動が不可能である。
  • 自力摂食が不可能である。
  • 糞・尿失禁がある。
  • 声を出しても意味のある発語が全く不可能である。
  • 簡単な命令には辛うじて応じることも出来るが、ほとんど意思疎通は不可能である。
  • 眼球は動いていても認識することは出来ない。

(日本脳神経外科学会より)

 一般的には、植物状態や寝たきりなどと呼ばれることが多いと思います。訪問リハビリという特性上、自宅から外出することが困難な方へのリハビリを行う機会が多く、弊社でも遷延性意識障害のある方への訪問に多くお伺いしています。

 では、どのようにリハビリを行えば良いのか?本日は実際に私が訪問を行っている方のリハビリ例をご家族の了承のもと、紹介させて頂きたいと思います。


【リハビリ前の様子】

 弊社のリハビリ利用を開始されたのは、退院後1年が経った頃です(退院後から公的介護保険でのリハビリは実施していました)。リハビリ開始時は車椅子に座ることも困難で、姿勢が大きく崩れていることが分かります。

 仙骨部(臀部)には褥瘡が認められ、長時間の車椅子座位を禁止されていました。

 車椅子をティルト、リクライニングで大きく後方へ傾けていますが、頸部や体幹は安定せず、側弯が強く認められます。骨盤も常に後傾位で仙骨部への圧が持続的にかかっていることが容易に想像できます。


【リハビリ開始後1年】

 リハビリでは、ご家族の希望をお聞きし、車椅子に座ることができるようにアプローチを行うことになりました。私が実際に行ったリハビリプログラムは以下の通りです。

  • 関節可動域の拡大
  • ベッド上端座位練習
  • 座位での頸部、体幹のアライメント調整
  • 車椅子の調整、シーティング
  • リフトの使い方のコツを伝達

 リハビリ前の姿勢と比較すると、頸部や体幹の傾きは軽減し、まっすぐに座ることができていることが分かります。股関節や膝関節も伸びており、フットレストに接地するまでに至っています。

 さらにリハビリを続けることで、

  • 車椅子で散歩に行くことができるようになった
  • 関節が柔らかくなり、オムツ交換や着替えが行いやすくなった
  • 車でドライブに行くことができるようになった

 などの変化を認めています!

 現在は仙骨部の褥瘡は無くなり、車椅子へも安定・安心して座ることができるようになっています。


【現在取り組んでいること】

 現在は、トイレで排泄を行うという目標に向けてリハビリを行っています。トイレ用のキャリーに移って移動し、排便肢位をとることができるかという評価、練習を行っています。

 キャリーの座面には穴が空いていて、トイレまで移動し、そのままトイレ上で排便が行えるようになっています。トイレが狭い場合などはポータブルトイレを利用するか、バケツなどをキャリーの下に置いて排便を行います。

 排便リズムができるまでは、座薬を利用したり、摘便を行って排便を促します。

 体を大きく前傾させることで肛門直腸角が一直線になり、排便を行いやすくなります。いわゆる排便姿勢です。

 前方にテーブルとクッションを置いて体を支える方法もありますが、体の緊張や気切の有無、関節拘縮の程度によって使用を判断します。

 排便のリズムができてくれば、時間誘導を行うことで自然排便が行えるようになってくることがあります。


【できることを増やす】

 リハビリの内容は、その方の希望や目標、体の状態などによって個別に変わってくるものです。

 しかし、誰にでも共通して言えることは、できることを増やす取り組みを行うことが私たち療法士の使命だと言うことです。

 在宅で生活する方の生活をより良く、豊かにする取り組みを行うことが重要なのです。

 だからこそ、最初から無理難題だと突っぱねるのではなく、実現できるように一緒に考え、実行することが大切です。


 そして、最後にご紹介しておきたいことがあります。

 全国には遷延性意識障害のある方を支援するための会があります。

 九州には、「家族の会 九州つくし」があり、皆さんで生活のための知恵や工夫を共有しています。様々な相談にも乗ってくれますので、お悩みの方は是非、会に参加してみて下さい。

*私個人は九州つくしの賛助会員ではありますが、弊社は家族会との利害関係は一切ありません。


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