トップダウンアプローチの重要性-遂行分析を必ず-

2017年05月31日

 作業療法では、トップダウンアプローチという言葉をよく耳にします。Assessment of Motor and Process Skills(AMPS)は、Occupational Therapy Intervantion Process Model(OTIPM)の中で用いる評価ですが、実は、AMPSを用いなくてもトップダウンアプローチ自体は行えるんです。

 今日は少し作業療法のことについて書きたいと思います。記事の内容が専門的過ぎてすみません…今日の記事は作業療法士の方に読んで頂ければと思います。


ートップダウンって何?ー

 まず、トップダウンという言葉を簡単に説明します。いつも講義の中ではこの辺りから話を進めるんですが、トップダウンは、まず初めにクライエントの作業を特定するところから始めます。カナダ作業遂行測定などを用いて、クライエントにとって重要な作業を明らかにします。この段階は、冒頭で挙げたOTIPMの第一段階、第二段階に当たります。

 そして、次に明らかとなった作業を実際に行ってもらい、観察評価します。この段階はOTIPMの第三段階に当たり、遂行分析と呼ばれる評価となります。そして、ここで用いる評価方法の一つとして、AMPSが挙げられます。AMPSは2017年現在で世界20万人分のデータを持っています。作業療法士が作った標準化された評価の中では一番大きなデータを持っているのではないでしょうか?

 少しだけAMPSについて触れると、AMPSは標準化された課題の中から、クライエントに合った2課題(PADL/IADL)を選択し、観察評価するものです。評価基準には、運動技能項目16項目、プロセス技能項目20項目があり、マニュアルに沿って採点していくものです。その後、得られた結果をパソコンに入力し、データ解析を行います。

 ちなみに、AMPSは認定評価なので、講習会を受講した後、データをアメリカに送る必要があります。受講したら必ず得られる資格ではないため、注意が必要です。


ートップダウンは作業の特定と遂行評価を必ず行う必要があるー

 トップダウンには、上記の流れが必ず必要となります。遂行評価を行った後に、必要に応じて下位検査を行います。よくトップダウンと間違われやすいものとして、トップtoボトムが挙げられます。トップtoボトムは、最初に作業の特定を行うものの、遂行評価は行わず、筋力や感覚、関節可動域などの下位検査を行うものです。この用語の違いは覚えておくと良いかもしれませんね。

 トップダウンの良いところは、不必要な検査をすることを避け、早期に介入計画を立てることができるという点です。検査ばかりしていたら時間がもったいないですもんね。特に訪問で仕事をしている場合はトップダウンの方が良いと思います。

参考文献:福田久徳:意味のある作業への介入が訪問作業療法で効果をあげた事例.作業療法34.p70-76, 2015. 


ー遂行評価に必ずしもAMPSを行う必要はないー

 AMPS講師を行っている人間がこんなことを言ったら怒られそうですが、遂行分析はAMPSの専売特許ではありません。誰にでも行うことができるものです。私たちは、日本AMPS研究会という組織などからCIOTS JAPAN作業遂行研究会を再編しました。そして、新たな取り組みとして、作業遂行に関する勉強会を各地で行っています。

 もちろん、作業遂行分析を勉強していく中で、AMPSの必要性を強く感じたら講習会を受講して頂けると嬉しいです!AMPSは世界的に標準化された評価ですし、新しい視点を持ってクライエントを評価できるようになると思います。


ーなぜトップダウンは必要かー

 トップダウンで実践を行うことは、問題を早期に特定/改善しやすいという点があります。急性期だから行えない、回復期だから行えないということはありません。作業を行っている場面を観察できれば、どんなクライエントにも行うことができる最も基本的な作業療法の評価技術です。

 また、早期からトップダウンで介入することで理学療法などとの差別化を図ることができます。習得モデル、代償モデルを駆使して作業遂行の改善を図ることは作業療法士の得意技ですからね!


ートップダウンへの批判と展望ー

 一方で、トップダウンは現実的ではないということを耳にすることもあります。確かに、クライエントの状態によってはトップダウンでの介入は困難です。例えば、何も作業をすることができない方の場合、トップダウンでの介入は難しいですよね。

 では、クライエントを変えるとどうでしょう?クライエントが患者さん本人からご家族に変わったとするとアプローチ内容や方法、視点が変わるかもしれません。トップダウンで介入できる可能性がさらに拡がりそうですね。

 最後になりますが、これはボトムアップを批判しているものではありません。トップダウンの良さと共に、ボトムアップで行うことの良さもあるからです。また、この記事はトップダウンで行うことの面白さや可能性を1人でも多くの作業療法士に知ってもらいたいという想いから書いています。


ー余談ー

 前回の医療保険の改定では、病院で行うリハビリテーションの成果に対する報酬額を決めるためにFIMを用いるようになりました。介護保険分野でも2020年に向けて事業所ごとに成果指標を用いて診療報酬を変えようという動きが出てきています。医療保険や介護保険制度が大きく変わる中、今後、作業療法士が作業療法士として生き抜く力をつけて行かなければなりません。世の中の流れを敏感に感じ取り、行動に反映させていくことのできる人がどれだけいるかが、今後の作業療法士の未来を創っていく鍵となると言えそうです。

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