リハビリ小説-閉ざされた世界編7-

き、の、う、は...
美宏は久とパソコン操作練習を行っていた。
ディスプレイ上に表示されたキーボードにカーソルを合わせ、クリックすると文字入力が行える。
しかし、その入力スピードは実用的とはとても言いづらいものであった。
「美宏さん、お疲れ様でした。文字入力のスピードは40分で30文字くらいですね。一文字入力するのに一分ちょいかかる計算になります。」
『やっぱり初めてだから難しかったです。』
「マウスの操作に慣れてくるともう少し入力スピードも上がってくると思いますよ。」
遂行評価では、マウスを上手く把持し続けることができず、何度も手から落とす場面が見られた。また、クリックの際に手の中でマウスを持ち替えることができなかったり、クリックする力が弱い場面が認められていた。
久は、実際の操作場面を観察することで様々な【技能】を評価していた。技能は運動とプロセス技能*から成り立っており、物の操作が上手く行えるかや時間の効率的な使い方ができるかなどを見る。
*運動とプロセス技能評価には、Assessment of Motor and Process Skills(AMPS)があります。作業療法士のみが取得できる認定評価で、日常生活動作能力を測ることができます。世界20万人のデータを持ち、ラッシュモデルに基づく客観的な測定値が算出されます。
「美宏さん、次回も同じようにパソコンの練習を行っていきたいと思いますが、よろしいですか?」
『はい、もちろんです。パソコンが使えるようになるのが楽しみです。』
二人は次回もパソコン操作練習を行うことを約束し、最初の練習を終えた。