リハビリ小説-閉ざされた世界編5-

 「え?」


 『え?』


 美宏と久はお互いに見つめ合い、目を丸くしていた。

 この状況となる数十分前に京子と久は美宏の家を訪れていた。


 作業療法の開始に伴い、カルテの情報を整理して、京子と久は美宏の家を訪問することになった。

 必要な情報を集めた上で、どのようにアプローチを行なっていくかがリハビリの鍵となる。そのためには、美宏から直接詳しい話を聞く【面接】と呼ばれる評価が重要となる。


 「はじめまして、福多久(ふくたひさし)です。今日は美宏さんのことについて少しお話を聞かせて頂いてもよろしいですか。」


 『はい、こちらこそよろしくお願いします。』


 「京子さんから、パソコンができるようになりたいと聞いたんですが、リハビリでやってみたいこととか、生活の中でこれができたらいいなぁと思うことって他にありますか?」


 面接と聞くと畏(かしこ)まった印象を受けるが、何気ない会話から始まる。まずは、クライエントが何をしたいか、できるようになりたいかを明らかにするのである。


 『そうですね、今はパソコンを少ししてみたいかなって思うくらいで、他には特にありません』

 『京子さんから聞いてると思いますが、私は寝たきり状態なので、自分でできることはほとんどありません。ご飯だってヘルパーさんに食べさせてもらってます。』


 「ご飯を自分で食べれるようになるっていうのをリハビリの目標に挙げるのはどうですか?」


 『私はベッドを起こし過ぎると頚椎の亜脱臼になる可能性があるし、手も変形しているから自分で食べることは難しいと思います。それに、食事はヘルパーさんに食べさせてもらってるから、今は大丈夫かな』


 美宏と久は、リハビリを進める上での目標を立てるために、身の回りのことや趣味のことなど、色々な話をした。そして、面接を終えて久はリハビリの目標を確認した。


 「では、リハビリの目標として、パソコンができるようになるということと、オムツ交換が楽にできることを目標にしましょう。」

 「今日は時間があまりないので、練習はできませんが、美宏さんのパソコンを一応見せて頂いてもよろしいですか?」


...


 『あ...私、パソコン持ってません。』


 その瞬間、二人の目は丸くなり、お互いを見つめ合った。

リハビリ小説-閉ざされた世界編6-