リハビリ小説-閉ざされた世界編13-

 『本当にタブレットって便利ですね。インターネットは色んなことができてとても楽しいです。』


 タブレットの操作練習を重ね、美宏はインターネットで行える様々なことに興味を示していた。


 「パソコンはマウスの操作が難しかったですし、ガラケーでは指に負担がかかってしまいます。でも、タブレットなら美宏さんの身体に負担なく使えそうですね」

 「ただ、決して安いものではないので、僕からは購入してくださいと言いづらいです。タブレットの購入費用とは別にインターネットに繋ぐための月々の回線費用も必要になるんです。」


 久は具体的にどの程度の費用がかかるのかを説明し、インターネット回線についても説明を行った。


 作業療法を行う上で、クライエントを取り巻く様々な環境要因*を知っておく必要がある。それは、物理的な環境要因だけではなく、経済的な面についても同様である。


*カナダ作業遂行モデル(CMOP-E)では、環境を物理的環境、社会的環境、文化的環境、制度的環境の4つに分類しています。また、包括的環境要因調査票(CEQ)では、安心生活環境、相互交流環境、家族環境の3因子14項目が生活の質に影響する因子であるとしています。


『私、そのくらいの費用なら払うことができると思います。タブレットを使ってブログ記事を書いたり、動画を見たりしたいです。』


 美宏はタブレットを購入することを決め、タブレットをベッド上で使えるように移動式の固定台を用いることにした。


 ベッド柵などに取り付けるタイプの固定台の方が安価であったが、介護を受ける際に取り外しの手間がかかることなどを理由に、移動式(キャスターが付いたもの)を選択したのである。


 タブレットを使うようになってからの美宏の生活は、【制限のある生活】から、【楽しみのある生活】へと徐々に変わっていった。


 ブログ記事の更新はもちろん、動画を見たり、洋服を買ったりとインターネットを活用して様々なことを行えるようになっていた。


 『眠る前にこのまま目をつぶってしまうと目が覚めなくなるかもしれない…明日のことを考える余裕がない…』と話してた美宏が、自分で毎日の献立を考えたり、レシピを調べ、ヘルパーさんに作ってもらうようになるなんて誰も想像していなかっただろう。


 美宏からは自然と悲観的な発言は減り、笑顔が増えていた。


 しかし、まだこの時、二人はインターネットの負の面や恐ろしさを知らなかった。