リハビリ小説ー閉ざされた世界編14ー

美宏は数日前とは全く違う気持ちになっていた。楽しくてワクワクした気持ちから、まるで霧がかかったようなドンヨリとした見通しのつかない不安や悲しみで覆われていた。
悪性関節リウマチという病気によって、本当に辛い経験を多くしてきた。同世代の若い女の子が普通に行なっていることも自分にはできない。
今では、病気が進行して、誰かの手を借りなければ生活ができない。
そして、ようやく自分の楽しみが見つかったそんな矢先に、崖の上から背中を押されたような、今までの世界に引き戻されるような、そんな感覚であった。
薄暗い部屋の明かりの中、美宏をタブレットの光が照らす。
美宏は子どものように声をあげて泣きたい気持ちであったが、懸命に声を殺して泣いた。
タブレットが表示する画面は涙でもう見ることができない。
いや、これ以上見る必要はない。
もうこれ以上先を読み進めると、自分の存在を自分で否定してしまいそうだったから。
外はポツリ、ポツリと雨が降り出し、夜更けには大雨へと変わっていた。